イタリアの作家であり、ジャーナリストでもあるジョバンニ・グァレスキは、自叙伝にこう綴っています。
重い神経症にかかっていた妻マルゲリータは、ジョバンニに自分の夢の話をします。自分は「ふしあわせな足」を引きずりながら、街路をあてどもなく歩き続けている。だから朝目覚めると疲れきってしまっている。ジョバンニは妻に自転車を買ってあげます。夢の中でも自転車に乗れば疲れずに済むだろうと思ったのですね。
マルゲリータは夢の中でも自転車を手に入れ、これなら疲れないと喜んでいたのですけど、1週間もするとまた塞ぎ込んでしまいます。夢の中で自転車がパンクしてしまって、また歩かなければいけなくなったからです。ジョバンニは妻をガレージに連れて行き、パンクの修理の仕方を教えます。さらに目隠しをしていてもパンク修理ができるまで繰り返し練習したそうです。
夢の中でもパンクの修理ができるようになったので、再びマルゲリータの状態は良くなります。ところが今度は自転車ごと崖下に落ちてしまい、今でもそこでうずくまっているという夢を見ました。現実世界で、ジョバンニとマルゲリータは登山の練習をするのですけど、これはうまくいかなかったそうです。そこで最後にジョバンニが提案したのは、夢の中でとにかく叫んでジョバンニの名前を呼ぶことでした。
妻は夢の中で必死で彼の名前を呼び続けました。崖の上に現れた夫にロープを降ろしてもらい、それを全身に巻き付けて救出される夢を見たことで、彼女の神経症は寛解していったそうです。だって、もしひどい状況に陥っても、あなたを呼べば駆けつけてくれることが分かったのですもの。彼女はそう言っていたそうです。
夢は自分が置かれている状況に左右される。夢の中でも人に気を遣っている。そのことは前回書きましたけど、夢の世界に、現実の世界から何かを持ち込むこともできるのです。
そして…この文章を読んでくれているあなたも、そろそろ「夢を見るかもしれない」ですね。
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