言葉に対する感受性のようなもの。それを磨かないといけないのかもしれない。精神科医としてのトレーニングを受けている時に、そのことに気づいたのですけど…いくつかの例外はあるにしてもカウンセリングというのは言葉を介して行われるものだからですね。
知っている単語の数を増やすというシンプルな取り組みも、もちろん大事なのですけど、それ以上に大事なのが組み合わせ方なのですね。
女優を職業とされている方から伺ったことなのですけど、セリフの文体にリズムがある脚本は覚えやすいのだけど、そうでないものはなかなか記憶できないそうですから、言葉の組み合わせにはリズムということも考慮しなければならないわけです。詩作の時に韻を踏むというのも、リズムを生むためのテクニックの1つですね。
「テクスト」という言葉は、言葉によって編まれたものという含みを持つ語で、英語のtextile(テキスタイル、「織物」)と同じくラテン語の「織る」が語源だそうです。まさにこの織物としての言葉というのは、言葉をどう組み合わせるのかという、私がテーマにしていることを一言で言い当てているように感じます。
それはまぁ、傾聴することがカウンセリングでは大事ですよ。それはまぁ基本中の基本です。だけど、クライアントの発した言葉の表面上の意味も、その裏に隠れている意味も、さらにその言葉をなぜ使ったのか(なぜ「死にたい」ではなく「消えたい」と言ったのかとかね…。)まで考えて、何かしらの言葉を返す。もちろん何も言わないという選択肢もあるのですけど、コミュニケーションを言葉でとっている以上、カウンセリングの時間というのは気が抜けません。
だから、クライアントに対する情報があれば調べておいた方がいいですけど、それ以前に言葉を使うためのウォーミングアップは欠かせないのです。
広告のチラシのコピーだって言葉ですけど、言葉だったら何でもいいという訳にもいかない。私にとってジュンパ・ラヒリのテクストを読むことは、ジムでトレッドミルを走っているようなものだったりもするのです。まぁ、純粋な読書の楽しみでもあるのですけどね。
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